「お母さんにも読んでほしい」と言った本

『おおかみだって きをつけて』

重森千佳/作・絵フレーベル館


えほんの なかで、おおかみは いつだって わるもの
「おおかみに きをつけて」なんて みんな こわがるけど、

それは ちがう。

こわいのは、おおかみじゃなくて、やつらの ほうだ。


ある日の帰り道。娘(6歳)が言いました。
「すっごくおもしろい本が幼稚園にあった。お母さんにも読んでほしいから、本屋さんで買って!」


それは読みたい! どんな本?


「えっとね、おおかみが出てくる本」

もしかして赤ずきんちゃん?
「ちがう。赤ずきんもでてくるけど、おおかみがめちゃくちゃされるの。ヤギも出てくる。ヤギって何匹いたっかな?」
ヤギが出て来るなら七ひきのはず。
「こぶたは三びきだよ」
ますます混迷。何のお話なのか見当がつきません。
今度がんばって本の題名を覚えてきてねと話しました。


翌日、「覚えてきたよ! 『おおかみだってきをつけて』っていう本だった」


聞いたことがないタイトル。ネットで調べると最近出た絵本のようです。
本屋さんに電話で注文しました。


一週間後、届いた本を見て娘は「これ!」と大喜びでした。



本を片手に狩りをしようとするおおかみのある一日。
3つの昔話を下敷きにした意外過ぎるストーリーでした。
大人にとってはなかなか切ないお話ですが、娘にとっては“ワルモノ”なおおかみがトホホな目にあうところがおかしかったのかな。
誰も傷つかないという点では、もとになった昔話よりも楽しく読めたのかもしれません。


おそらく子どもに買ってと言われなければ読むこともなかったし、
知っていたとしても勧めなかったと思います。


本の選び方は「今」の発露。
ちょっとハラハラしながらも、今、彼女はこんなふうに世の中を見てるんだな
ということがわかりました。


おすすめ本を読んでくれるのもうれしいけど、本をおすすめされるのはもっとうれしい。
親子の関係がまた少し変化したのを感じました。


(松井 記)

ことば×からだ☆おやこ絵本ワークショップ

イシス子ども編集学校による親子向け絵本ワークショップ。 絵本づくりワークや言葉遊び、手遊びを通して、ことばとからだをのびのび、いきいき、育てます。 《絵本の読み方が広がる 親子の会話が変わる》