繰り返し「読んで!」は、ことばとからだの成長の大事なステップ

子どもはよく繰り返しますよね。よく聞くのは、絵本のヘビロテ。わが家でもあります。ここ2年くらいずっと読んでいるのは『スキャリーおじさん』シリーズ

「スキャリーおじさん」とは、作者のリチャード・スキャリーのこと。1960~1980年代に活躍したアメリカの絵本作家です。

スキャリーおじさんの絵本シリーズ(BL出版)


シリーズの舞台はビジータウンという架空の町。町ではいつもささやかな騒動が起きます。そのたびに、猫のハックルやミミズのローリー、ぶたのフランブルさんなどフレンドリーで親切な人たちが集まってきます。


どのお話もショートストーリーになっていて、日常のできごとのさまざまな場面が細かく描き込まれています。


たとえば、ウサギの子が、おつかいに出かけて、玄関やレジなどあらゆる場所でつまづく「ウサギのつまづきくん」。


または、アライグマのラクーンさんの「ついてない一日」。朝起きると家の水道が止まらなくなっていて、出かけると街頭にぶつかったり、ズルい友人のたかりに合ったりと朝から夜までとことんついてないお話。


「つまづき」や「ついてないこと」を煽る描写はなく、起こったことが淡々と描かれています。繰り返すことが当たり前のように。

子どもがいる場所では同じ騒動が繰り返し起こるもの。「そんなものよね」と絵本に共感し、慰められる私(母)です。


児童文学者の瀬田貞二は、いい物語は子どもの体の動きと相関関係にあると書いています。(『幼い子の文学』中公新書、「行きて帰りし物語」より)


子どもにとって繰り返しは体と心のおもむくまま。息子は『スキャリーおじさん』のお話に、無意識に共感しているように思います。だから、繰り返し「読んで!」と絵本を持ってくるのかもしれません。

そう考えると、子どもが繰り返し持ってくる絵本を知ることは、子ども自身を知る入口になるのかもしれないと思います。


子どもとの生活は、同じ場所をぐるぐる回っているようで、後から振り返ると、回りながら少しずつ昇っていたことに気づきます。成長は螺旋階段のようです。


(吉野/記)

ことば×からだ☆おやこ絵本ワークショップ

イシス子ども編集学校による親子向け絵本ワークショップ。 絵本づくりワークや言葉遊び、手遊びを通して、ことばとからだをのびのび、いきいき、育てます。 《絵本の読み方が広がる 親子の会話が変わる》